被害者はいずれも、似かよった姓の名前
警視庁捜査1課と西新井署は、脅迫、名誉棄損、放火などの疑いで捜査を始めた。被害者はいずれも、似かよった姓の名前だった。警視庁では、極めて悪質な犯罪とみて、脅迫状の筆跡などから犯人の割り出しを急いだ。
東京都足立区内、1989年
一連の中傷放火事件が起き始めたのは、1989年5月初めごろだった。
5月8日午後7時25分ごろ、東京都足立区扇、靴製造業Aさん(59)方玄関横の水道計量器内に、ベンジン入りの容器が投げ入れられ、放火される事件が発生した。
さらに、6月5日夕ごろには、Aさんが東京都足立区興野に所有している作業場周辺でも同様の放火が起きた。隣の解体工(50)宅や作業場など計120平方メートルが燃えた。
こうした放火と前後して、Aさん方や周辺には、「息子が隣の娘との間にできた子供を殺した」などという根も葉もない内容の中傷文書が投げ込まれていた。
警視庁の調べで、同じような被害に遭っている人が十数人いることがわかった。いずれの場合も、Aさんと同姓か名字が一字違いという。
6月23日には、西新井署にまで同様の文書が投書された。内容がでたらめなうえ、被害者間にも結び付きがなかった。西新井署では、何者かが電話帳などで“標的”を選び、愉快犯的にいやがらせ行為を続けているとみている。
脅迫状の消印は、東京都墨田区内の向島郵便局のものが多かった。西新井署では、犯人が墨田区内にいる可能性が高いとみている。